幸福迷子が選んだ道

エッセイ

めちゃめちゃに働いていた頃がある。週に半日しか休まず、毎日朝6:00に家を出て終電で帰る(しかも月3回くらいは泊まる)日々を送っていた。

――あの頃って、なんであんなに頑張れたのかなあ?

首をひねりながら、最近は基本的に自宅で仕事をしている。
実働時間があの頃に比べたらずーっと短い。
集中力は増したし、効率的に働けている。


でもどこかで「もっと頑張れるはずなのに」と焦る。
仕事を選べて、環境も自分好み。
なのに、どうして馬力が出ないんだろうって。

私は過労で壊れてしまったことがある。
似た方の経験談に「体力の限界値が低くなる」と書いてあったから、私もそうなのかもしれない。

けれど、何か違う気がして、ずっともやもやしていた。
最近幸せじゃない。
あの頃のほうが幸せだった気がする。だから頑張れていた気がする。

――幸せってなんだ?

文章を書いていれば幸せ?

最初は文章を書く仕事でお金をもらえることが幸せで、それだけでよかった。
もっと文章について突き詰めていくんだという意気込みで走れた。

でも少し落ち着いてきて、息詰まる感覚が増す。
文章をもっともっと磨けばいいじゃない、と言い聞かせても何かが引っ掛かる。

「ライターいっぱい稼げるぜ!」みたいなひとに激しい憤りを感じる自分もいた。そういうひとと自分は違うと思いたかった。私はお金のために働いてるんじゃない。

――じゃあ、なんのために?

その答えが見つからない。

愛されていれば幸せ?

私には恋人がいる。
本当に大好きな人だし、愛されているとも感じる。

「愛されている」と感じない人生を送ってきた。
だから「愛されている」実感は、それだけで夢のような心地だ。

実は、これが手に入ったら幸せなのだろうとずっと思ってきた。
お金で買えない人の愛。
これぞ幸せなんだと。

でもね、なんだか違うっぽい。
それだけじゃ幸せになれないのかもしれない。

愛されれば愛されるほど、よくわからなくなっていった。

そして、ベッドの上で動けなくなった。
私の心は幸せ太りで、もう動けなくなっている。
何も要らない。もう、本当に何も要らない。

昔の私と今の私、どっちを選びたいの?

お金がない、時間がない、愛されていない、美しくない。
心がガリガリに痩せて、目が三角になったあの頃の私。

ぷにぷにとベッドの上に寝転ぶ今の私を、過去の私がにらんでいる。
どう?どっちが私らしいの?って訊かれている。

私は、幸せを疑い始める。何が必要なのかな。
本当はここでハッピーエンドのはずじゃなかったの?
どうして満たされないの?
ゲームですべてのクエストをクリアしたのに、エンドロールが流れない。
次は何をすればいいの?

私、誰かの役に立ちたい

過去を一生懸命集めて、私はこの前、好きな人にようやく言葉を伝えた。

「私、誰かの役に立ちたい」

私を動かしていたのはたぶん、このきもちだった。

私が書いたweb小説を読んで、「ありがとうございます、力をもらいました」と言ってくれる人がいた。
会社員のころ、私の働きで確かに人生を良い方向へ転換してくれた人がいた。
今も、取材のときに言葉を交わして相手が笑顔になるのが好き。

文章とか言葉って、単なる手段なのだ。
私が誰かに何かできることといえば、文章や言葉に頼るしかなかった。
でもほんとうにやりたいことは、その根にあることだ。

誰かの役に立ちたいなんて、偽善だ。
私はそう思っている。今でも。
自分がからっぽだから人に尽くして何かを満たそうとしているようで、きらい。

「でも、やらない善よりやる偽善って、けっこうありだと思うし、続けていればそれって善なのでは」と、好きな人は答える。

ものすごくいい子ちゃんぶってる気がするけれど、いいのかな。
いや、むしろ開き直って、こう考えればいいのか。

この、どうしようもなく幸せ迷子な私を助けるために、他人の役に立つ。

おお、なんと自分よがりな。
誰とも距離を縮めたくない、遠くから傍観していたいと思ってきた。
そんな私が、私のために誰かの役に立とうとするなんて。

まあ、でも決めた。
まだ道が正しいかわからないけれど、とりあえず「誰かの役に立つ」と。
偽善からスタートするよ。

おまけ:ブレてもいいことにした

でもね、私はこうやって考えて次々と試しては失敗しを繰り返す。
だから一貫性がない。自分に自信がもてなくなる。

「それでもいいじゃん、飽きやすくて行動力があるあなたらしさだよ」

その言葉を信じて、前に進むことにする。
だから一年後には「やっぱ自分のために生きるわ~」とか言っているのかもしれない。
それでもいいんだよ。

むしろ一生懸命やって「誰かの役に立つなんてこりごりだ」と言えるレベルになったら、それはそれで私にしては上出来だろう。

こんなまとまりのない文章を最後まで読んでくれた人へ。
読んでくれてありがとうございます。
おまけで伝えるけれど、今小説を書き始めたんです。

「誰かのために(というか、あなたのために)」を意識して書き綴るから、形になったら読んでほしいな。

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。