小説を書くときの私の頭及び手元について

作品レビュー

先日、NZから日本にいらしていたサトウカエデさんが「お会いしませんか」と心優しく声がけしてくださったおかげで、ヤマシタマサトシさん、平山高敏さん、ひらやまさん、吉玉サキさん、さとうさん(順不同)と会食する機会がありました。

楽しい会の中で話題になったひとつが「小説を書くときどんな風に書いているの」でした。それに対して応えた内容を、わかりやすいよう手順に沿って書いてみます。でも、これはノウハウ記事ではありません。なぜなら私はプロの作家でもなければ、作家講座等で正式に学んだことすらない、ただの妄想を言葉にして並べるのが好きな人間ですから。

①テーマについて熟考する

物語の前に、点としてテーマと向き合います。具体例として、「あの夏に乾杯」(KIRINビール×noteのコンテストです)というテーマで書いた作品「消えない泡」を挙げます。

私は「夏」と「乾杯」について熟考します。その内容はノートに記したり、なんとなく絵にしてみたりします。

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「夏」
・湿気
・嫌い
・東京⇔北海道(気温の違い)
・飲み会、浮気
・夜

「乾杯」
・はじまり
・祝い
・未来
・コミュニケーションスタートの合図

他にもいろいろありますが、こういう感じでテーマに紐づいて思いつくものを洗い出してみます。同時に、「夏」なら冬と対比して何があるか検討してみたり、「乾杯」ならジョッキやグラスの種類によるニュアンスの違いを想像したりします。

②書きたいワンシーンを先に思い描く

次に、自分が読んで想像したら一晩は軽く夢見心地になるだろうな、というワンシーンを決めます。先日の飲み会でカエデさんと吉玉さんと「ときめくワンシーン、その一瞬のために書くよね」と盛り上がった気がします(もし違ったら、そうやって盛り上がりたかった私の妄想です)。

「消えない泡」の場合、私が描きたかったのは、「一度別れた二人が乾杯して仲直りする」ワンシーンです。嘘やん、そんなうまくいくわけないやん。そう思うでしょう、だからこそ物語で書きたいのです。たった一瞬の乾杯で心が打ち解けたら、めっちゃ素敵じゃないですか。

何度も想像します。乾杯した瞬間、泣き出すところを。こう、くしゃぁっと顔が歪んで泣くんだろうな、と。想いがあふれて、胸も喉も痛むだろうな。それまでの間にはずっと我慢しただろうよ、色んな気持ちを。プライドで隠したり、嘘でごまかしたりさ。その月日を超えての一杯は、なんと、おいしいだろうか!

その味まで鮮明に思い描けたら、今度はそのワンシーンが違和感なく迎えられるストーリーを逆算し始めるわけです。

③逆算して構成のパズルを組み立てる

あのワンシーンが成立するための答えはひとつ。そのくらい敏感なセンサーで手繰り寄せます。

二人は仲直りするわけだから、当然別れた理由がある。でも一杯で仲直りできるわけだから、想いは通じ合ったまま。何がいいだろう。夏、ちょっとした悪戯、バカみたいな出来事。浮気、しかもたいした気のないやつ。それをするのは、二人のうち、どちら?

そんな風に、逆算します。二択なら説得力があるほう、三択なら魅力的なものを。みたいな感じで、常に選択肢をいくつか置いて、「こっち」「こっち」と決定していく。

このプロセスを私は頭ん中で全部やっちまうのですが、混乱してきたらノートに書きます。noteじゃなくて、手で書くほうのノート。

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(これは結局複雑になりすぎてどこにも出せなかった小説の、選択肢ゲームをした痕跡です)

④頭出しして絵コンテを想像しながら書く

構成がなんとなく見えたら、書きます。プロットとかの書き方はよくわからないので、そのまま書き始めちゃいます。

「絵コンテ」って飲み会で言った気がするからそのまま見出しに書いたのですが、改めて絵を見てみると全然「コンテ」じゃありませんでした。誇張です。ごめんなさい。

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この1枚は、「書斎を手に取る」という作品のなかの冒頭で出てくる主人公の家、土曜の朝のメモです。登場する部屋がこういう間取りだとか、ズームして映す瞬間はこことか、そういうのだけは決め打ちで絵にして、頭のなかでカメラワークを想像します。マンガのコマ割のときもあります。

それを、文字に起こします。

このカメラワークだったら、右側から味噌汁の香りがするなあとか、階下から物音がするなあとか、せっかく小説なので映像では表現できないことも書きます。これが言葉で物語を書く楽しさだよね!

⑤飽きるまで読み直す

なんとなく書けたら、読み直します。はい、見つけた誤字。読み直します。あれ?ここの表現、重複してない?読み直します。なんだかリズムが悪いなあ。読み直します。この段落、全体から見たらまったく要らなかったわ。読み直します。セリフ足そう。読み直します。やっぱ消そう。読み直します。ダメだここ泣けるわ。読み直します。このシーンが効いてるから泣けるのか、だったらもっと誇張しよう。読み直します。(以下略)

⑥公開

もう二度と読みたくないと思うまで読み直しても、公開してから誤字を見つけます。自分の目に向けてV字サインを作り、「節穴!!」と罵って修正します。

あとは寝ます。直後SNSなどを開いておくと「誰か読んでくれないかな(わくわく)」と胸が高鳴って逆につらいです。所詮誰からも期待されていない、自己満足の作品です。書けた自分のことを褒めちぎって終わりにすればよいでしょう。なのに、誰かに読んでほしいと願ってしまう。それはなぜだろう……。そんな問いを自分のなかでこねくり回しながら、やはりSNSをチェックして、誰かが反応してくれていると飛びついて喜びます

以上です。こんな感じで私は小説を書いています。

普段の仕事ではやらない順序を経て文字を書けるので、なんだか工作をしているようでとても楽しいです!!最近はおすすめされた公募にも挑戦していて、ウェブで書くのと紙を意識して書くのは全然違うのだなあ、とチュートリアルすら終わっていないRPGの主人公のような発見に胸を躍らせています。

また新しい作品ができたら公開しますので、ぜひチェックしてくださいね!

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