読んだ小説ログ(20191222)

作品レビュー

ひとつの情報が人物と心の大半を描く

ライターの五十嵐さんにおすすめされて読んだ一冊。ガラスみたいに割れやすい心の一部分を、日常の情景から浮き彫りにする丁寧な表現がとても学びになるなと思った。特に飲食の表現がすごい。居酒屋、家での一杯、バーでの時間など、食べたり飲んだりを通じて人物描写をするシーンが多いのだけれど、それが生々しくてめちゃめちゃ計算されていると感じた。

【居酒屋でカシスオレンジをデキャンタで頼んじゃう、さとる君。】

これだけの設定で、その人は、そこにいる。

人間の恐ろしさ、汚さをキッチュな悪夢風に描く

この本を読んで思い出したのは、キルビル。めっちゃ人が死ぬし血がジャンジャカ流れるんだけど、そこに残酷さや嫌味がなくて、どこかコミカルに過ぎ去ってしまう感じ。この物語では、もう少しドロッといやーな感じの人間の心情を描いてはいるのだけれど、なんだかそこに重みがなくて、不思議。後半の怒涛の展開、最後まで一気読みさせるパワーもすごい。「こういう展開だろうな」と予測して読んでいたけれど、結局外れてしまって、笑ってしまった。恐れ入りました。

構造が面白い×キャラが魅力的=倍々でおいしい

これは再読本。一度じゃ理解しきれなかったと思うから、もう一度。ミステリーをひっくり返してくる設定、構造がとっても面白い。「そう来たか~~~」と。で、めちゃめちゃ入り組んだ内容だし、それを読者に理解させるための説明が超長いんだけど、それを語るキャラが魅力的だからすーっと読める。作者の博識具合に感銘を受けつつ、とってもクレバーなマンガを読んでいるような気分で読めた。これアニメ化してほしいな。主人公がカッコいいのよ。ありありと思い浮かぶ。

自分が小説書く時に意識したいことメモ

キャラクターの描き方。何を元にその人の心情、特徴を描くか。

・誇張した身体的特徴、セリフ回し(方言、海外言語の多用)
・食べ物、部屋など周辺の情景描写
・強烈なエピソード、それに引っ張られる今

展開の面白さはなぜ生まれるか。

・予想を裏切る(予想しやすいブラフの物語を用意する)
・物語中盤以降で重要人物を差し込む
・準備ターンと加速ターンの緩急をつける

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