少女革命ウテナを観劇したあとの元少女のたわごと

作品レビュー

少女革命ウテナを観た。アニメ版から劇場版まで、わざわざこのためにdアニメに登録して。

すでに有益な考察記事がたくさん出ているから、この作品がすごい理由をロジカルに説明するのはやめておいて、私が思い出したこと、考えたことをとりとめもなく書きたい。

これはひとりの元少女が、少女革命ウテナで自分や世界を少しだけ捉えなおしたお話だ。

■少女である以外選択肢がなかった

少なからず私にも少女だった時期があるのだが、私は少女であることが嫌だった。

「男まさり」と呼ばれるタイプで、顔は平均やや下。性格もかわいらしくないし、コミュニケーションスキルも低かった。学内の少女ランキングでは相当な下位にいただろう。

あと、当時の私は「女という生き物が嫌い」だと思っていた。ウワサ話が好きで、男のことばかり気にして。ヒエラルキーを作り、非論理的な理由で人を除外する。そういうすべてを憎んでいた。

少女らしさから逃げることで、私は少女ランキング外のどこかで戦いたかった。でも、そうして斜に構える私もまた、学校という鳥籠の中で実に少女らしい少女だった。

青春と言って「輝かしい」と続ける人もいるが、あの頃を思い出すと、私は暗い気持ちを覚える。どうふるまっても、学校の中で冴えない記号にしかなれない自分にやきもきしていた。

何者かになりたいと願っていた。でも、そんな願いを持っている時点で、やっぱり私は少女だったんだと思う。絵に描いたような、少女。

私があそこから抜け出すためには、世界を革命しなければならなかったんだ。

■世界にたった一人の王子様はどこに

「王子様」っていうアイコン、よく考えてみれば世界の女性のほとんどが幼少期に刷り込まれていると思う。だって、世界共通の童話の多くは王子様がお姫様を救う物語が描かれているんだもの。さらに日本には同様の少女向け作品があふれているのだから、「王子様」を知らないで育つほうが難しいのだ。

そして、社会を知らない幼少期の私たちが、自分を「お姫様だ」と認識するのもまた、当然のことだ。「自分なんてお姫様になれない」って思い始めるのは、いったいいつのことなのか。私は、意外とけっこうな大人になるまで信じていたよ。「こんな私でも、いつか自分を大好きな王子様が現れる」って。

この、“自分を大好きな”って感覚が恐ろしい。王子様が選んでくれてお姫様になれるという前提からすべての思考が紡がれると、選ばれないことなんて想定外すぎるんだ。

でも、王子様になりうる世の男性だって、選ぶ権利がある。選ばない権利だってある。むしろお姫様から選ばれて王子様になる権利だって、あっていいじゃないか。

つまり、何が言いたいかっていうと、「世界にたった一人の王子様」という偶像を脳の芯に叩き込まれて、選ばれるのを待っているお姫様予備軍は、もっと視野を広げたほうがいいと思うんだ。

お姫様になれない自分、あるいはたった一人の王子様を選びに行く自分だって、ありだよね。さらに言えば、自分が王子様になって、誰かお姫様を探しに行ったっていい。そう、王子様とお姫様のテンプレートに、私たちは縛られなくていい。

■永遠に続く幸せなんてないと思う

こんな日々が永遠に続けばいいのに。そんなふうに願う過去があるだろうか。で、もしもその時を永遠に引き延ばせる魔法があるなら、それを使いたいだろうか。

難しい。悩む。私の場合、今がとっても幸せで、今が永遠に続けばいいと思っている。そう思っている先には停滞があると思うから、うまく刺激や冒険を取り入れるよう意識はするけれど。魔法があるなら……。

でも使っても、きっと後悔する。永遠に引き延ばされた時点で、それはもう、今感じている幸せではなくなってしまうんじゃないだろうか。

明日には変わってしまう今日だから、あるいは過去の失敗や不幸を越えて手に入れた今日だから、こんなに幸せなんだろう。やがて少しずつ変わっていくかもしれないし、今だって不幸に向かってゆるやかに朽ちている最中かもしれない。

けれど、やっぱり永遠に引き延ばさなくていい。そう思える私は、きっともう、不毛な決闘はしなくていい。

■私たちが闘う理由

きっと私たちは、いつも何かと闘っている。闘うことで生きている。例えば、目の前にあるタスクかもしれない。あるいは、上司や家族など対人関係かもしれない。自分自身の怠惰とか、喫煙への誘惑とか?もっと抽象度の高い何かかもしれない。

この闘う行為は私たちの存在意義にもなるわけだけれど、忘れちゃいけないのは闘う理由だよな。どうして闘うのか。

その闘う理由が浅かったり弱かったりしたら、私たちはきっと、負ける。この負けって、いったい何かと言えば、土俵から降りることを意味すると思う。

絶えず闘う中で、絶対に引けない勝負ってのがいつか来ると思う。その時、闘う理由こそが、その土俵から降りない最後の力になる。よく偉人たちが言う、「勝つまでやり続ける」ゾーンに入る。

すべての勝負に対してそうある必要はないと思うけれど、引けない闘いに挑むとき、刃となる心をしっかり研ぎ澄ましておくことが大切だ。それこそ、付け焼刃では太刀打ちできない。これまでの人生で積み重ねてきた闘う理由を、胸から引き出すんだ。

■少女革命ウテナ、こりゃあすごい作品だった

まだウテナを観ていない人は、何ひとつ「少女革命ウテナ」の話をしていないと思うかもしれない。で、気になるなら観てほしい。たぶん、全部観終わってまじめな解説をするのが野暮なことのように思えるはずだ。

そして私がここまで書いてきたことの意味を、「あー、なるほどね」って思ってくれるはず。人生まるっと変えてくるインパクトのある作品です。

ぜひお時間のあるときにどうぞ。

少女革命ウテナ(全39話)

キャスト] 天上ウテナ:川上とも子/姫宮アンシー:渕崎ゆり子/桐生冬芽:子安武人/西園寺莢一:草尾 毅/有栖川樹璃:三石琴乃/薫 幹:久川 綾/桐生七実:白鳥由里/鳳 暁生:小杉十郎太/御影草時:緑川 光/千唾馬宮:川村万梨阿/鳳 香苗:折笠 愛/薫 梢:本多知恵子/高槻枝織:西原久美子/石蕗美蔓:矢島晶子/篠原若葉:今井由香/苑田茎子:中川 玲/土谷瑠果:佐々木 望 [スタッフ] …

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。