北海道で猛暑が続くのはじわじわ死に至る毒と一緒

エッセイ

札幌が暑い。少なくとも直近3日間は日中30度を超えている。今日は夜になっても室内温度が20度を切らない。猛暑の波は北海道全体に及んでいるらしい。ライター友達で道東在住のみゆきさんとは、ここ最近SNS上で「暑い」しかやりとりしていない。コミュニケーションの精度が4Kからドット絵くらい下がっている。

「日中30度超え」、「夜の室内温度が20度を切らない」という条件を見て、「おいおい、その程度で音を上げるのかよ、道産子は暑さに弱いねぇ」と道外の方は思うかもしれない。10年間東京で暮らしていたから、私も40度超えの夏は経験した。たしかに、あれは地獄以外のなにものでもなかった。が、それでも今思えば東京の夏のほうがよかっただってエアコンがあったんだもの

エアコンと北海道

北海道はがんばればエアコンがなくても夏を過ごせる環境だ。先ほど伝えたように、ピークでも天気予報の温度は30度ちょい超えくらい。屋外の温度計が35度を記録していれば「やば!」と思う。関東の夏と違って湿気がないので、不快さも少ない。砂漠的な、カラッとしてムワッとたちのぼる暑さだ。そして夜は18度くらいまで下がってくれるので、夜風がうまく入れば室内の温度は適温まで下がる。

ちなみに昔はここまで暑くなかった。もともとがエアコン必需の街ではないのだ。それ故、札幌市のエアコン導入率は30%程度(※平成26年「全国消費実態調査」、総務省統計局)と低い。猛暑日が続くようになった昨今は当時より導入する世帯が増えているだろうけれど、いかんせんスムーズに導入できない理由もある。

エアコンをつけることを想定しない一軒家に新たにエアコンを取り付けるためには、わりと設置費がかかる。これはウチの話だが、築年数が古いため構造的に室外機をつけるのが難しいらしく、事前に調べていた平均価格の2倍程度の見積もりが出てきた。これで10畳以上対応のエアコンを買ったらもう、あまりに痛い出費だ……。

その価格を投資して、ひと夏数週間の猛暑日をしのぐ。これ、めちゃくちゃ悩むのである。だって冬を快適に過ごすための暖房はすでに設置してあるから、ほんとうに夏のためだけにエアコンを導入しなきゃならんのだもの。

非常に悩む投資だからこそ、みんな決めるのが遅いのも厄介だ。だいたい暑い夏に耐えられず、「もう今日!今日エアコン入れよう」と決めるご家庭が多い。そして同じ日にエアコン導入の申し込みが殺到する。ただでさえ対応する業者も少ない。工事の日まで数週間待ちなんてこともある。あれ、その頃ってもう涼しくなってる……よね……。

地方の猛暑は逃げ場がない

だったら、よし。耐えよう。毎年、そう覚悟してしまうのである。

いざというときのために取っておいた保冷剤が、ようやく日の目を浴びる。タオルで彼らを包んで、首の後ろとおでこに巻きつけ、扇風機を強風首振りでセット。風呂に水をためて、いつでも足を突っ込めるようにしておく。準備しているときの私、ゾンビ映画クライマックス直前の装弾シーンの表情である。

日の出とともにゴングが鳴る。刻一刻、じわじわと命を削られていく。そこに加えて、デスクワークというサブクエスト(※人生においてはメインクエストだが、命が危ぶまれる夏は一時的にサブクエストになる)もある。デスクトップPCの発熱が追い打ちをかける。

もうろうとした頭によぎる、OL時代の姿。「冷房効きすぎ~」とかろやかに愚痴りながら、ユナイテッドアローズのサマーカーディガンをはおっていた日々が私にもあった。今はユニクロのエアリズムワンピース1枚で脇の下に保冷剤を挟み、カーテンを閉め切った(※遮光で少しでも気温を下げるため)自室で鬼の形相で原稿を書いている。

どちらにも幸せはあるが、今は圧倒的「暑い」という感情にすべてが呑み込まれ、冷房こそが天国への階段だと確信してやまない。

東京はたとえ40度の炎天下でも、冷房がガンガンに効いたオフィスやカフェ、コンビニといった休憩地点がそこらにあった。レベル高めのダンジョンだがセーブポイントと安地が頻繁にある感じだ。

一方、北海道の都心部外は冷房にあたれる近場の避難所がスーパーとホームセンターくらいしかない。中途半端に東京ナイズされて車すら持たない私は、さながら暑さというクローズドサークルに閉じ込められた哀れな子羊である。

大丈夫、今年もあと数日すれば大好きな秋がやってくる。ああ北海道、昔はこんなに暑くなかったじゃん。これが温暖化現象。わたしにできるエコとは。持続可能な生活とは、人類の未来とは……。……喫緊の課題を地球規模で考えはじめたら、頭が溶けて何も行動に移せないフェーズだ。あぁこいつ手遅れだよ、兄ちゃん。

北の民よ、エアコン備えを始めよう

……という状況の道民、私だけではないはずだ。じわじわと熱中症レベルが致死量に近づいている気がする。みんな、というか私、無理しないでエアコン入れよう。いまは金銭的に無理でも来年も必ずこの夏はやってくる。貯金しよう。前もって準備しとこう。できれば春までに申し込もう。

あと、道外から一時的に旅行に来る人にとっては涼しいだろうから、よく北海道の夏を「冷涼」、「過ごしやすい」と表現しているのを見かける。でもいざ住んでみるとなまら暑いから、移住を検討してる人は先に期待値を下げつつ、移住拠点のエアコン設備の有無を確認をしよう。(想像通りの夏を過ごしたいなら釧路がおすすめ)

調べてみると、エコに配慮した機器やシステムを取り入れることで補助金をもらえるキャンペーンも一部あるみたい。だいたい2020~2022年あたりで申し込み期間が設定されているので、真剣に検討している人は一度調べてみるといいと思います(条件や時期が限定的なのでリンクは貼りません)。

みなさま、暑い日が続きますがお体に気をつけて。なむ。さあ、仕事の原稿書こう。

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。